胃がん
胃がんとは
胃は食道と十二指腸の間にある臓器で、食道側から噴門（ふんもん）、胃底部、胃体部、前庭部、幽門（ゆうもん）に分けられます。
胃の主な役割は食物を消化することです。
胃がんは罹患部位として3番目に多いがんであり、年間約4.2万人が胃がんで死亡しています（国立がん研究センター「がん情報サービス」データより）。
胃がんは、胃の壁の内側を覆う粘膜に発生します。次第に大きくなり粘膜下層、固有筋層、漿膜（しょうまく）へと進んでいきます。粘膜下層までにとどまっている胃がんを「早期胃がん」といい、固有筋層より深く浸潤したものを「進行胃がん」といいます。
がんが深く進むと臓器の壁を超えて近くにある臓器（大腸や膵臓など）に直接拡がっていきます。また、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って離れた臓器でふえることを転移、漿膜の外側を越えておなかの中にがん細胞が散らばることを腹膜播種（ふくまくはしゅ）といいます。
がんの深さや転移の程度などから進行度（ステージ）を判断し、全身の状態を踏まえて治療方針が決まります。
進行度（ステージ）
| ステージ1 | がんが固有筋層までに留まるもの |
| ステージ2 | がんが固有筋層を越えて浸潤するものでリンパ節転移を認めるもの |
| ステージ3 | がんが漿膜下層に浸潤あるいは漿膜を越えるものでリンパ節転移を認めるもの |
| ステージ4 | 他臓器への遠隔転移を認めるもの |
深達度
| T1 | がんが粘膜〜粘膜下層までに留まるもの |
| T1a | がんが粘膜層までに留まるもの |
| T1b | がんが粘膜下層までに留まるもの |
| T2 | がんが固有筋層までに留まるもの |
| T3 | がんが固有筋層を越えて漿膜下層まで浸潤しているもの |
| T4a | がんが漿膜表面に接している、あるいはこれを破って腹腔に露出しているもの |
| T4b | がんが直接他臓器に浸潤しているもの |
症状
早い段階では自覚症状がほとんどなく進行しても症状がない場合があります。代表的な症状は、みぞおちの痛みや違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振、体重減少などが挙げられます。また、胃がんから出血することで起こる貧血や黒い便が発見のきっかけになる場合もあります。これらの症状は胃がんだけではなく胃炎や胃潰瘍（いかいよう）などの他の疾患でも起こる場合があります。
診断・検査方法
主な検査方法
- 内視鏡検査
- 胃造影検査
- 腹部超音波検査
- CT検査
治療
治療法には、内視鏡治療、手術、薬物療法などがあります。 治療法は、標準治療に基づいて患者さんの体の状態や年齢、希望なども含めて検討し共に決めていきます。
内視鏡治療
内視鏡を使って胃の内側からがんを切除する方法です。一定の基準を満たすリンパ節転移の可能性がごく低いと考えられる早期のがんで、一度に切除できると考えられる場合に行われます。
手術と比べると体に対する負担が少なく、病変の切除後も胃が残るため食生活に対する影響が少ない方法です。
治療法について詳しくは以下のページをご覧ください。
外科手術
遠隔転移がない胃がんで、内視鏡治療による切除が難しい場合には手術による治療が推奨されています。
手術では、がんと胃の一部またはすべてを取り除きます。同時に胃の周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清（かくせい）や、食物の通り道をつくり直す再建手術も行います。切除する胃やリンパ節の範囲は、がんのある部位と病期から判断します。胃の切除範囲によっていくつかの方法があり、代表的なものは、胃全摘術、幽門側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門側胃切除術です。
合併症としては、縫合不全や膵液が漏れ出す膵液漏、腹腔内膿瘍などがあります。また、胃を切除したことに伴い食事のとり方に注意が必要になります。
化学療法
胃がんの薬物療法には、大きく分けて「手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法」と手術後に再発の予防を目的とする「術後補助化学療法」があります。
遠隔転移がある場合などは薬だけでがんを完全に治すことは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、生存期間が延長したり症状を和らげたりすることができます。胃がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。患者さんの状態や生活に合わせて最適な治療を行います。
また、手術でがんを切除できた場合でも目に見えないようなごく小さながんが残っていて、のちに再発することがあります。こうした小さながんによる再発を予防する目的で行われる化学療法を術後補助化学療法といいます。手術後の患者さんの全身状態やがんの進行度を考慮しながら、術後補助化学療法の内容を検討します。
緩和ケア・支持療法
緩和ケアとは、がんなどに伴う体と心のさまざまな苦痛（身体的・精神的・社会的・ スピリチュアルな苦痛）に対して、苦痛を予防し和らげ自分らしく過ごせるように患者さんやご家族さんを支えるケアです。 緩和ケアは病期が進行してからだけではなく、診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんの希望に応じて幅広い対応をします。
支持療法とはがんそのものによる症状や治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。
当院における胃がん治療の取り組み
当院では早期胃がんに対する内視鏡的治療から進行がんに対する外科的手術・化学療法・緩和ケアまで専門病院として積極的に行っており、患者さんそれぞれの背景に合わせて治療法を一緒に考えていきます。
また、胃がんを早期発見しできるだけ負担の少ない治療で根治ができるように、内視鏡検査を中心とした定期的な検査を勧めています。
