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胃腸の病気

1.クローン病

1932年、クローン博士が回腸末端部(小腸と大腸の境界付近)を侵す腸炎を報告して以来、次第にクローズアップされてきた病気です。

クローン病は消化管であれば、口腔から肛門まで、あらゆるところに潰瘍性病変をつくり、消化管壁の全層を侵す原因不明の病気です。

どうやら、食事がこの病気に関与していることは間違いなさそうです。
とくに、脂肪分を多くとると病状が悪化することが分かっています。

症状と診断

クローン病の症状として多いのは、腹痛、下痢、微熱ですが、その他に体重減少、
貧血などがみられ、合併症としては肛門病変がかなりの頻度でみられます。

全身性には関節痛、肝機能障害、口内炎などがみられることがあります。
クローン病の特徴的な所見としては、病変が

1.非連続的に認められ、
2.縦走性潰瘍形成、
3.腸管粘膜が敷石状になっている、
4.裂溝や瘻孔(瘻管のアナ)、
5.肛門部病変がみられる

ことなどですが、これらは、はっきりとした症状が出そろったクローン病の場合です。

クローン病の初期病変としての肛門病変は重要なものです。
初期のうちにクローン病を発見できれば、食事療法を行うことにより、緩解期(症状の落ち着いている時期)を延長させることができます。

クローン病は肛門病変を合併しやすいため、二十歳以下の若年者を診察する時、私たちは、常にこの病気を念頭において診ています。

多彩な肛門病変や、年齢的に不自然な肛門病変をみた時は慎重に診察し、腹部症状などの有無を聞き、クローン病が疑われれば、採血及び大腸内視鏡検査を行い、大腸から小腸(回腸末端)まで丁寧に観察するように努めています。

腸粘膜にアフタ(白斑のようなもの)などの所見があればクローン病を十分疑うことになります。

所見がなくても、患者さん、家族にはその旨を十分説明し、注意深くフォローアップしていきます。

2.潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、「主として粘膜を侵し、しばしばビランや潰瘍を形成する原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症」と定義されています。

はじまりは必ず直腸に発症し、病変部が上行性に広がり大腸全体が侵される場合もあります。

しかし、大腸を越えて小腸まで病変が及ぶことはまずありません。

原因はクローン病と同じく不明ですが、免疫学的な面が最も注目されています。

発症年齢が15~40歳の青壮年に多く、15歳~30歳の年齢層にピークがみられますが、男女別の頻度の差はありません。

症状と診断

症状は血便、粘血便、下痢で、軽症例では粘血便のみですが、重症になると1日、20~30回の血性下痢、発熱、腹痛などを訴え、時に中毒性巨大結腸症(おなかがパンパンに張ってくる)に陥って、大出血を起こしたり、腸管穿孔を起こしたりすることがあります。

この病気の大部分は慢性の経過をとり、再発、再然を繰り返すのが特徴で、発病後何年間も活動期が持続するようなこともあります。

慢性的に繰り返す粘血便があり、この病気が疑われる場合には、感染性腸炎などを除外したうえで、大腸内視鏡検査や注腸X線検査を行って診断します。


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3.大腸憩室(けいしつ)症

●大腸憩室(けいしつ)症

憩室とは、消化管壁の一部が内側から外側に向かって突出して袋のようになっているものです。
消化管のどこにでもでき、先天性のものと後天性のものがあります。

大腸憩室のほとんどのものは後天的です。
消化管憩室の中では、大腸憩室の発生頻度がもっとも高く、ついで十二指腸、食道に多いといわれています。

大腸憩室は他の消化管憩室とは異なり、多発性であることが多く、憩室炎などの合併症を起こしやすいので、臨床的には大切な疾患です。

大腸憩室は高齢者に多いことから考えてみても、大腸壁が加齢とともに弱くなって、血管が腸壁を貫通する部位に発生するようです。

大腸憩室は盲腸、上行結腸、S状結腸にできやすく、多発したものを大腸憩室症と呼んでいます。

●症状と診断

一般的には無症状ですが、憩室に糞便が入り込み憩室炎を起こすと腹痛、発熱、出血などの症状を呈するようになり、とくに盲腸、上行結腸の憩室炎は急性虫垂炎(俗にもうちょう)とまちがわれやすく、医師を悩ませます。

憩室の炎症が強くなると、腸管の周囲に膿瘍を形成したり、憩室穿孔を起こして腹膜炎を合併して緊急手術をしなくてはならないこともあります。
炎症を繰り返すうちに腸壁が肥厚し、とくにS状結腸部では腸管の狭窄や短縮がみられ、排便困難、排便時左下腹部痛などの腸閉塞症状を呈するようになります。

下血もときどきみられる症状ですが、たいていの場合は絶食して安静にしていれば自然に止血します。

しかし、まれに大量出血を起こし緊急手術を要することもあります。

●治療

症状のない大腸憩室症は、治療の必要はありませんが、憩室炎を併発すれば、安静、食事療法、抗生剤投与など内科的治療が必要になります。

内科的治療にもかかわらず膿瘍、ろう孔を形成したり、腸管狭窄になり強度の便通異常をきたすものや憩室穿孔、大量出血を起こすもの、再三にわたり憩室炎くり返すものなどは外科的治療の適応となります。

大腸憩室症の食事療法としては、アルコールや刺激性の強い食品、肉類などはさけ、消化のよい軟らかい食物をとるように心がけるのがよいといわれています。


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4.大腸過敏症

●大腸過敏症

過敏性腸症候群ともいわれます。
大腸の過敏な運動によって起こる機能的な異常で、便通障害やいろいろな腹部の不定愁訴を訴えますが、種々の検査を行っても特に器質的病変のみられないものをいいます。

一般の消化器系の症状を訴えて来院される患者さんの約半数にみられるともいわれます。
30から50代の青年・中年層に多く、男性より女性にやや多いようです。
社会的、家族的に日常生活のストレスの多い年代に生じやすいのかも知れません。

●症状と診断

便通異常がほとんどで、長期にわたる下痢、便秘、あるいはその両方を繰り返したりします。
便秘では便の量が少なく、うさぎ糞状のコロコロした便で、残便感を強く訴えるものが多いようです。

診断は、がんや炎症性疾患などの器質的疾患や、便通異常、腹部症状を呈するような糖尿病、慢性膵炎などの全身的な疾患を除外した上で、詳細な病歴を聴き、的確に症状を把握して行います。

最近では、腸管内圧の測定や、バリウムによる腸管運動の観察などを行って客観的に診断を行うこともあります。

●治療

本症の多くは心理的因子が強く関与していることより、心身両面から行う心身医学的治療が基本です。


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